善福寺川緑地は、尾崎橋から数えて4本目の橋となる白山前橋までです。白山前橋から先は、都立和田堀公園となります。通して歩いた場合は、ふたつの公園の境や違いはあまり意識することはないでしょう。ただ、明らかに違う点は、和田堀公園では雑木林を意識的に残すような景観整備が行われているようです。つまり、サクラの回りには緑があるというロケーションなのです。明るい春の日が川まで届かないような、そんな区間もあるのが特徴です。
公園内に入り、ふたつ目の大成橋から右岸歩道がなくなります。右岸側は切り立ったというと大げさですが、段丘が迫っています。段丘上も和田堀公園ですが、この段丘は少し下流の大宮八幡境内へと続きます。そのため、サクラは左岸のみの整備ですが、谷底のような地形から目一杯陽を求めて枝を伸ばしている、そんな表現の樹が多いように感じています。歩行者専用橋の御供米橋は観桜には絶好のポイント。すぐ目の前に花を着けた枝。ただし、ちょっと狭い橋なので、通行の邪魔にならないようにしなくてはなりません。
和田堀公園は、大宮橋で終了となります。ただ、この公園は飛び地のように善福寺川周辺に点在しています。大宮橋を過ぎると、サクラの姿は極端に少なくなります。大宮橋と宮木橋の間の右岸に非常に短い距離ですが、桜並木があります。ただ、訪れた時、ここのサクラはすでに終わっていました。そう言えば、3月の中旬にここを訪れたとき、何本か既に花を着けていた樹がありました。二枚橋と済美橋の間は、善福寺川の右岸遊歩道は異色の景観を持っている所です。ここも飛び地のようになっている和田堀公園なのですが、遊歩道を挟む形で針葉樹が植えられています。一年を通じて緑に挟まれた歩道に、和田堀公園からのサクラの枝が伸びています。
済美橋で和田堀公園は、本当にオシマイ。ここから先は河川景観を考えて植えられたサクラは、一本もありません。個人宅や企業などの敷地内から、川への枝を伸ばすサクラを見るのみとなります。圧巻は、杉並区立済美教育研究所敷地内のサクラでしょう。熊野橋と紅葉橋間の左岸になります。樹齢が結構あるであろう、太い幹が何本も連なり、川沿いへと枝を伸ばしています。熊野橋、紅葉橋共に橋上から見事な姿を拝めます。このふたつの橋の間は、左岸歩道を歩けば、サクラのトンネルを行くことができるのです。
紅葉橋から下流側には、もう足を止めて見るほどのサクラの姿はありません。堀之内橋近く、そして上に掲載した定塚橋近辺の個人宅のものは、それでも撮影しておきました。定塚橋の先、和田堀橋で環七通りを過ぎると、最終区間です。左岸の学校やマンションの敷地内から伸びるサクラの姿を何本か目にするだけです。上右の写真のサクラが、善福寺川沿い最下流のサクラです。写真に写っている橋は、光明橋。その三本先の橋が和田廣橋。善福寺川最後の橋で、その先は神田川です。
善福寺川を歩いてみて、おもしろいことに気がつきました。神田川沿いの遊歩道の桜並木は、栄泉橋付近や乙女橋付近などの例外はありますが、川沿い、つまり遊歩道の転落防止フェンス沿いに植えられていることがほとんどです。つまり、遊歩道の川側にサクラがあります。対して、善福寺川沿いのサクラはすべて遊歩道と川を挟むようになっていました。サクラ、遊歩道、川という位置関係です。サクラは明るい陽の光を求めて、川へと枝を伸ばします。結果として、遊歩道の上にサクラの枝があるわけです。好みは分かれるでしょうが、善福寺川ってサクラを求めて歩くにもいい川だと思ったのでした。