下水処理の徹底で川の浄化
汚れきった神田川の水をきれいにする試みは、下水処理から始まります。神田川沿いの落合に下水処理場(現在は下水道局の呼称変更により水再生センターと呼ばれます)が建設されたのは、昭和39年です。東京西部の生活排水や雨水の処理を行います。 処理能力は、一日当たり45万トン。この処理場のおかげで下水がまず流れ込まなくなります。そして、処理水を川に戻すため、川の浄化ができるわけです。水害対策と環境対策は、表裏一体です
この処理場の水が神田川に一気に流れ込むため、高田馬場での水害がクローズアップされました。前ページまでに書いた水害対策も平行して行う必要があるのです。さて、こうした処理場は、現在東京中にあります。処理水の利用方法も、川の浄化以外にも、 工業用水に転用するなど様々です。落合処理場の水は、新宿新都心のビル街に送られトイレ用水などに使われます。川の浄化という点では、城南3河川(古川・目黒川・呑川)に送られ水源の水として使われます
神田川景観整備
こうして、神田川の水は少しづつきれいになり、魚も戻ってきました。次は、川を取り巻く環境作りです。東京都では、東京都景観条例(平成9年東京都条例第89号)に基づき、景観づくり基本方針を策定し、東京の景観づくりを進めています。これにともなって「神田川景観基本軸基本計画」及び「神田川景観基本軸景観づくり基準」が定められました。神田川を都民の財産ととらえ、大切に育てていこうというわけです
以下の五つの視点から、この整備は始められました。
<神田川を身近に親しめるような景観をつくる>
<地域特性を生かしつつ連続する景観をつくる>
<歴史的・文化的資源を生かした景観をつくる>
<地域のまちづくりや景観づくりとの連携を図るとともに各公共事業との調整を図る>
<神田川と川沿いの地域が調和したまち並みの景観をつくる>
ガイドラインに基づき、整備が始まりました。人の集まりやすい場所として、川沿いにプラザ(溜まり場)の設計。公園などがこれに当たります。そして、遊歩道の設置。護岸壁のコンクリートブロックの表面加工やペインティング。緑化ブロックの使用。神田川ではほぼ全川に設けられている転落防止柵の見直し。規格品のネットやフェンスを使わず、自然環境を考慮したデザインを採用する。こうした美観計画は、川の流れる周辺環境を細かく配慮した上で行われています。また、一部での河床のコンクリート撤去や周辺地域での雨水貯留マスの設置の促進など、平行して水害対策も行われています
水害対策と共に川の浄化に対する取り組みで、神田川に魚や植物、そして鳥が帰ってきました。で、遊歩道や公園の整備。最後に人間が帰ってきたわけです。一度死んだ神田川は蘇ったといっていいでしょう
(上左)ベンチの後ろに花壇。彩りが鮮やかです(上右)これは魚の隠れ家です(下)俗にサインと呼ばれる歩道や橋を飾る作品。この他にも色々あります