STORY&REPORT

Monfrotto 303SPHその後

 5DでQTVRを撮ってみたい、随分前からその欲求は強かったのですが、いかんせんレンズがありません。24-105mmF4も使えないことはないんですが、手頃な単焦点レンズが僕の手持ちにはありません。とうとう我慢できずというか、やっと20mmを中古で購入。303SPHでノーダルポイント出したりのセッティング作業をしました。で、その作業中、随分と303SPHの使い方も変わったなぁ、そんなことに気がついたわけです。自分に合った使い方が見つかって安定して使えている、そう表現した方がいいかも知れません。てなわけで、303SPHのその後のレポートです。お暇な方は、このレポートから読んでみると面白いかも知れません。結構この時から変えたところがあるんですよね。


箱 セッティングの終わった5DとEF20mm。このセッティング中に思い立って、このページを作ることにしました。
キット内容
303SPHから話題は思いっきり離れますが、ノーダルポイントを出す作業でとっても重宝したAdobeのBridgeCS3。ルーペでぐわぁんと拡大して視差のチェック。ファイルをいちいち開けなくてもできるので、非常に楽ちんでした。

 まずは、一次仕様ともいうべきスタイルの話からです。このレポートで触れている仕様です。ベースプレートは垂直アームを留めているネジがどうしても緩まなかったために、暫定ということでロングプレートを使ってました。これはすぐにショートプレートに交換しました。一方、垂直アームに付くアッパーアームは、ロングプレートを選びました。最初の頃は、ひとつのプレートで様々なカメラとレンズの組み合わせを試したいという考えがあったからです。ちなみに、この長短ふたつのプレートはマンフロットのビデオ雲台用のシューとして用意されているものです。303SPHには、ロングが2本、ショートが3本用意されていて、その内の2本を使うようになっています。
 さて、当初はロングプレートでスタートしましたが、出来るだけ軽くしたいので、アッパーアームもショートプレートにします。加えて、カメラを固定する留めネジを、エツミのノブに交換しました、これで、カメラの固定に工具は不要になりました。5月頃までこの仕様で使っていました。

カメラ取り付け部アッセンブリー 一次仕様です。ロアアーム、アッパーアーム共にロングプレートを使っています。まだこの頃は、どう使うか方向すらありませんでした。
センター出し用プレート
ロングプレートとショートプレート、これだけ違うんですね。ところが、ネジが緩まずしばらくはロングを使い続けるはめに。
センター出し用ブラケット
アッパーアームに付けたショートプレート。ノンスリップのためのゴムがはじめから付いています。この形をしばらく使っていました。
クイックシュー装着
現在はロングプレートに戻しています。コルクは自分で貼りました。左とシューの向きが違うのは、縦回転時の使い勝手によるものです。

 購入して使い方にも慣れてくると、いくつか気になる点や不満が見えてきました。購入直後のセッティングでとにかく気になっていたのが、アッパーアームの回転に力がいることです。初期アタリがとれて馴染んでくればスムースになるだろうと予想していました。確かに馴染みがでて回転する時に妙な引っかかり感はなくなったのですが、力が必要だ、とにかく重いというのは変わりません。潤滑浸透ケミカルを一度使ってみましたが、劇的に変わるということはありません。で、対策としてアッパーアームをロングプレートに戻しました。かさばるという点ではデメリットです。
 アッパーアームにカメラが装着されているわけですが、固定はネジひとつです。しかも、アッパーアームになるスライディングプレートとカメラ(実際にはクイックシュー)との接地面が決して大きいとはいえません。所詮、大きく重いビデオカメラ用、それも上下方向に力が加わることしか考えてないかのようなパーツですから仕方ありません。それがどういうことかというと、ショートプレートを使っていると、回転させる時にカメラにどうしても手が掛かってしまいます。カメラに手を掛けて回転させたら、間違いなくカメラは装着位置からズレます。慎重に行えばいいのですが、僕の性格上それはできません。ロングプレートにすればアッパーアームを回転する時に、アームに手をかける、アームの後ろ半分がハンドルとして利用できるのです。これが、アッパーアームをロングプレートに戻した理由です。

 アッパーアームをロングプレートに戻した頃、撮影中にロアアームに垂直アームを留めているネジが撮影中緩むというトラブルが起きました。購入時、何をやっても緩まないほど固く締まっていました。それが緩むのですから困りものです。いつも増し締めはするのですが、万一に備えた対策はしておくべきです。その結果、撮影時にはドライバーを持参するようにしました。確かにコイン一枚あれば増し締めはできます。でも、確実にやるのならば、工具の方がやりやすいし作業は楽です。幸いQTVR撮影に使うカメラザックのスペースには余裕がありました。柄の長くトルクを掛けやすいマイナスドライバーは、カメラザックに入れっぱなしになったわけです。
 どうせドライバー持っていくわけだし、ということでアッパーアームのカメラ取り付けネジも工具がないと締められないネジに戻しました。303SPHは確かにパノラマ雲台としては、トップエンドに位置する製品かも知れません。しかし、所詮マンフロットの製品だということを僕は忘れていました。巷でいわれるマンフロット製品の粗は、303SPHでも確かに存在しました。とにかくカメラがずれるのです。ドライバーを持参するようになってからは、カメラの留めネジをドライバーで親の仇のように締め上げるようにしました。幸い、カメラはクイックシューを使って装着します。どんなにきつく締め上げてもカメラには影響はでません。力業というのは悲しい話ですが、こうしてカメラのズレを気にせずに縦回転できるようになったわけです。

カメラ取り付けアッセンブリー取り付け
これが、ロングプレートに戻した最大の理由です。縦回転をする時、カメラに手をかけずにハンドルとして利用できるからでした。
カメラ取り付け部
付属したプレートは、KissX+シグマ10-20mm、KissX+シグマ8mm、5D+EF20mmでセッティング済み。プレートごとの交換で撮影時に対応します。

 クイックシューの話をしましょう。僕が使っているクイックシューは、ベルボンのQRA-635Lです。値段の割には結構信頼できるシューです。このシューベースを先に書いたように、アッパーアームのプレートに親の仇みたいに締め上げて装着しておきます。この時、プレートとシューがきちんと垂直を維持して付けておきます。今は、もう付けっぱなし。撮影前に増し締めをするくらいです。ところで、僕がQTVRで使うKissXだと、シューを外さないとバッテリー交換ができません。だから、カメラ側ではシューの脱着は必要です。ところが、カメラ側だといつも同じ場所にシューを装着するのは至難の業です。一応カメラにマーキングしているのですが、装着時の締め付けトルクによるズレは防げません。ですから、撮影前には必ず家で、303SPH側も微調整をするようにしています。調整項目はセンター出し。もちろん、すべてをきちんとやるべきでしょうが、そこまでやるのは面倒です。ただ、このパノラマ雲台を使っていてわかってきたのです。センターずれたら、どーしようもないって。

 このクイックシューは今では303SPHと438の間にも入れています。撮影時のセッティングが早くできる、最初はそれだけの理由でした。てか、それ以外の理由はあり得ません。ところが、このクイックシューに付いているリトラクタブル背当てが、非常に有効だと気がつきました。この組み合わせ、正式採用です。
 リトラクタブル背当ては通常撮影の縦位置装着時に、カメラの回転ズレを防止するための小さな爪です。この爪を起こして、300Nにあててみるとドンピシャの寸法でした。で、このおかげで撮影中に反時計回りに回転させても、雲台そのものが緩みにくくなったのです。安定感もアップしました。常識的に考えれば、余計なものを挟んでいるわけですから安定感は損なわれるはずですが、これはラッキーな発見でした。ちなみに、このリトラクタブル背当てですが、カメラの形状の問題でKissXでは使えません。残念。

カメラ水平だし
現在はレベリングベースと303SPHの間にもクイックシューを入れています。撮影体制に入ると、438は三脚に付けっぱなしです。
ノーダルポイント設定
本文でも触れた背当てです。樹脂製の小さな爪ですが、たったこれだけで安定感がアップしました。KissXでは使えないのが残念。

 303SPHは、雲台としては重い。そして、かさばる。この事実は否定しようがありません。「オレは体力があるから気にならん」なんて強がりを言う気もありません。さて、僕のQTVRの撮影スタイルは、エリアを決めて歩き回って集中的に撮るというものです。都内での撮影の場合、目的のエリアまでは公共交通機関で移動します。都内の場合は、クルマでは動くことはほとんどありません。
 となると、カメラバッグはバックパック型(カメラザック)を使います。大きな303SPHを持ち運ぶわけですから、一方の肩だけに重心がかかるショルダー型では負担を感じます。また、QTVR撮影中にバッグを背負って両手が自由に使えるという点からも、カメラザックを選ぶのは当然でしょう。CubicVRの場合、カメラバッグをそこいらに置いても必ず写り込んでしまいます。自分が作ったQTVRに自分のカメラバッグが写り込んでいるなんて、僕は絶対にイヤです。だから、背負ったまま撮影できるバックパック型は、僕にとっては当然の選択でしょう。
 303SPHの垂直アームは、折りたたみができるように蝶番が付いています。恐らくマンフロットもキャリングや収納を考えてこうした仕様にしたと思います。そして、垂直アームを立てた状態と畳んだ状態、それぞれでネジによる固定ができます。立てた状態で固定ができるのは当然です。じゃなきゃ使えません。問題は畳んだ状態です。一月ほど使った後、僕は畳んだ状態ではネジによる固定をしないことにしました。理由はふたつ。まずは、使う時いちいちネジを回して外すのが面倒だから。ふたつ目の理由は、結構ヤワそうなんですね、ネジが。ここがもし摩耗して、ネジとしての用をなさなくなったらつまりはパノラマ雲台としても機能しません。替えのネジは恐らく簡単に手に入れられそうですが、ネジの摩耗を防ぐため、使用中以外はネジを使わないようにしたわけです。で、キャリングや収納の時は、下の写真のようにベルクロテープでアームが動かないようにしています。

ベロクロで固定
キャリングは、この状態で行います。ブルーのテープはベロクロです。DIYのショップで安く買いました。これで、アッパーアームを固定しておきます。
積載状態
カメラザックの下部コンパートメントに収まった303SPH。438は実際には、もっと奥へ押し込んでいます。赤い取っ手はドライバーです。

 僕が使っているカメラザックは、昨年購入したエツミのトゥルーリー・トレッキングザックです。その動機や顛末はここで簡単に触れていますので、お暇な方は合わせてお読みください。僕のカメラバッグのラインナップから、必然的にこのザックを303SPHのキャリングに使うことになりました。というか、これしかカメラザックはありません。軽装備の撮影(QTVRも含めて)ならば、モンベル製のデイパックに緩衝BOXを入れてという方法もあるのですが、さすがに303SPHを入れることはできません。もちろん、不可能ではないのですが、303SPHはきちんとパーテーションが切られた部分に収めないと、パッキングに苦労すると結論づけています。

キャリング状態 サイドにジッツォ2227を付けた状態。ちなみに、僕は三脚を裸で運びます。人混みの中ではザックから外して、手に持って引っかけないように注意です。三脚ケースは飛行機で預ける時だけ使います。
最大積載状態 最大積載状態がこれ。KissXの下にシグマ10-20mm、8mmの下に17-70mmがあります。QTVRと共に普通の撮影もする時って、いつも機材で悩みます。303SPHがなければ、たいした機材量じゃないんですけどね。

 このカメラザックは、いわゆる2気室タイプです。下段の荷室に、303SPHを入れます。多くのカメラバッグと同じように、このトゥルーリー・トレッキングザックもベロクロでパーテーションを切れるようになっていますが、バッグサイドのベロクロが全周に付いているので、斜めに仕切り板を入れることができます。その結果、303SPHにジャストサイズのスペースが作れました。303SPHのスペースの後方に出来上がったふたつの三角形のスペースには、レベリングベースのマンフロット438やそれに変わる雲台。そして、タオルやらレンズ拭きやらを入れることにしています。
 上段は、カメラ、レンズが入ります。KissXとシグマ10-20mm。あるいは5DとEF20mmの組み合わせならば、普通の撮影用の標準ズームを加えても余裕です。思いっきり詰め込んだ時は、KissX、20D(バッテリーグリップ付き)、シグマ8mm、10-20mm、17-70mm、EF70-200mmF4。さすがに、この時は重さに閉口しましたが、収納力ではまったく問題ないカメラザックです。